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無念の棄権。それでも選手たちが見せた神大の意地

4強として上位への手応えをもってのぞんだ
1995年第72回箱根駅伝。
無念の棄権の中でみせた
神大スピリッツが翌年に襷を繋いだ。

18年ぶりの箱根から、着実に歩みを進める駅伝チーム。
周囲の期待もより大きなものに

1992年第68回箱根駅伝で18年ぶりの本大会出場を勝ち取った神大駅伝チームは、15校中14位に終わったが、翌年の第69回大会では8位に入り、念願のシード権を獲得した。さらに1994年第70回大会は7位、1995年第71回大会は6位と、着実にその歩みを進めていった。

駅伝チームの箱根での活躍に対して、在学生はもちろんのこと、卒業生や地域の人々も大いに盛り上がった。そして、そうした人々を中心に様々な援助が得られるようになる。その中の一つに中山キャンパスの練習グラウンドの完成があった。当時、学内に練習のためのグラウンドを持っていなかった部員たちはマイクロバスで離れた練習グラウンドに通っていた。冬場は日が暮れるのが早い。練習場として借りていた鶴見東芝グラウンドでは、真っ暗な中、ライトをつけた乗用車の灯りを頼りに選手たちは走っていたのである。この光景を目撃した卒業生が発端となり駅伝チームのための練習グラウンドが手配されたのだ。こうして、練習のための環境は整い、部員たちの練習量も爆発的に増えた。しかし、反面オーバーワークになる選手たちも出てくるという問題も発生した。大後は、それも一つの原因となって1996年第72回箱根駅伝の無念の棄権に繋がっていくと分析している。

4強の1角として臨んだ第72回大会。
しかし、日頃のオーバーワークが突如選手を襲う

1996年第72回箱根駅伝(出場15校)、着実に力をつけてきた神大は大きなチャンスを迎えていた。前年度の覇者山梨学院大学(以下、「山梨学大」)、早稲田大学(以下、「早大」)、中央大学(以下、「中大」)と並んで4強の一つにあげられ、十分に初優勝が狙える戦力が整っていたからである。絶対的なエースはいなかったが、レギュラー、控えともに高レベルの選手がそろっていた。

しかし、この大会は最初から波乱含みだった。1区で山梨学大をはじめとする多くの有力校が出遅れたのだ。神大も中野が13キロあたりから遅れだし、14位で2区の市川に襷を繋いだ。市川は徐々に順位を上げ、さらに3区の高津が区間賞の走りで、一気に2位まで順位を押し上げ、4区の高嶋はトップの早大を捉えるべくスタートを切った。しかし2キロ地点、突然、高嶋は左足を引きずるように歩き出してしまった。実は本番の数週間前から左足ふくらはぎの筋肉を痛めていたのだ。前日の2000mの最終調整でも走り終わった際に少し痛みを感じていたが、走っている時は不思議と痛みを感じなかった。しかし、当日の朝、またしても痛みはぶり返していた。

そして6.3キロ付近、ついに大後は高嶋を抱き止めた。この時点で、神大の棄権が確定し、チームとしての記録は認められないことになった。高嶋の故障は左足脛骨の疲労骨折だった。大後は、高嶋を庇いながら5区、そして復路を走る選手たちのモチベーションを心配していた。

「絶対勝負を捨てない。来年に繋がる走りを!」
途中棄権から生まれた本当のチーム力

しかし、そんな大後の心配をよそに5区の近藤は力走した。山のスペシャリストとして区間記録も期待されていた近藤の執念の走りだった。高嶋の棄権を知らされた時、一瞬頭の中が真っ白になったが、毎日のように大後から言われている「駅伝はチーム力。エントリーメンバー、補欠、その他の部員、そして駅伝チームに関わる全てのスタッフで行うものだ」という言葉が脳裏に蘇った。結局、近藤は区間2位の記録をたたき出す激走でゴールした。

そして、一夜明けた復路。結果は総合優勝の中大に次ぐ2位という大健闘だった。しかも総合2位の早大よりも4分22秒も早い記録を打ち立てたのだ。6区の友納が区間賞に迫る2位で弾みをつけると、7区の渡邊は区間賞の好走、8区の藤本へ繋ぎ、9区では重田がまたも区間賞、そして10区アンカー阿武が2位で大手町の読売新聞社前のゴールに飛び込んでくると、全部員が取り囲み、阿武を胴上げ、まるで総合優勝をしたかのような喜びだった。
復路の前夜、復路を走る選手たちは4年生のキャプテン榊を中心に話し合った。そして全員で出した結論は「絶対に勝負を捨てないこと。来年に繋がる走りをすること。復路優勝を狙うこと」だった。その結論通り、神大駅伝チームは往路のアクシデントをチーム力で見事に乗り越えた。

大後は、往路の近藤の走り、そして復路における選手たちの走りを見て、成長した神大駅伝チームを実感するとともに、身震いを感じたという。「このチームはこんなことでは崩れない。絶対に来年に繋がるなにかを掴んだ」。選手たちがみせた神大の意地は確かに栄光への道程に襷を繋いだのである。

Episode3 途中棄権から一年。全員駅伝で勝ち取った悲願の初優勝!Episode3へ

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